花やアクセサリーなど小さなものを美しく克明に撮影することができるマクロレンズ。
マクロレンズを使えば、単に小さなものを撮影するだけでなく、このように花などの繊細な部分を描写しつつ、綺麗なボケで雰囲気のある写真も撮影できます。
そのようなマクロレンズ中でも「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」はずば抜けた描写力で、マクロ撮影が好きな人を満足させる完成度の高いレンズとして評判を得ています。
一方、FUJIFILMのカメラで使えるマクロレンズと比べると「XF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」の価格は高く、取り回しもあまり良いとはいえません。
慎重に検討しないと、せっかく購入したのに、防湿庫の肥やしになってしまうなんてことも。
私もワンランク上のマクロ撮影がしたくて、このレンズの購入を検討していたときは数ヶ月ほど悩みました。
最終的には思い切って購入しましたが、しばらくは元がとれるのか不安でした。
しかし現在ではこのレンズの圧倒的な描写力やマクロ撮影時の快適さに大満足しています。
今回はそんな「XF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」を約半年間使用してきた私が、実際の作例とともに、良いところも悪いところも余すことなくお伝えしていきます。
XF80mm F2.8 R LM OIS WR Macroのスペック
レンズ構成 | 12群16枚 |
焦点距離 | f=80mm(35mm換算 f=122mm) |
開放F値 | F2.8 |
最短撮影距離 | 25cm |
最大撮影倍率 | 1倍 |
外形寸法 | 80mm×130mm |
質量 | 750g |
フィルターサイズ | 62mm |
その他 | 手ぶれ補正、防磁防滴構造 |
価格 | 113,750円~ |
外観、重量、質感について
外観はFUJIFILM純正の単焦点レンズとしては大きい方で、FUJIFILM純正のハーフマクロレンズの「XF 60mmF2.4 R Macro」と比べても2倍ほど長さが違いますね。
また質量も750gと大抵のFUJIFILMカメラのボディよりも重いので、そこが気になる方も多いでしょう。
ちなみに私は普段このレンズをFUJIFILM X-S10につけて使っていますが、撮影時はあまり重さや大きさは気になりませんでした。
FUJIFILM X-S10のボディならグリップが深く、重いレンズをつけても安心感がありました。
レンズの重さも、左手でしっかりとレンズを支えるという基本を思い出させてくれます。
そういった意味では、私にとって写真を撮る楽しさに支障をきたすほどのものではありませんでした。
ただ、FUJIFILM X-E4といったボディだとグリップがなく、スリムでコンパクトなカメラとは相性はあまり良くないかもしれません。
また、撮影時は気にならなくても、旅先などへ持ち運ぶ時はやはり大きさがネックになったことはありました。
例えば、ちょっとした旅行などでは大きく、重く、中望遠のこのレンズは汎用性にかけ、他のズームレンズと小さな単焦点を持ち出すことが多かったです。
あくまで「最高峰のマクロ撮影がしたい!!」という気持ちを前提として持っていないと、取り回しの良い小さな単焦点レンズや使い勝手の良いズームレンズを優先して持ち出してしまうかもしれませんね。
しかし、それらを考慮してもこのレンズでマクロ撮影する体験は唯一無二です。
XF80mm F2.8 R LM OIS WR Macroの魅力
ここからは作例を交えながら、このレンズの魅力をお伝えします。
ぜひ最後までお楽しみくださいね。
迫力のある最大等倍の撮影倍率
このレンズはFUJIFILM純正レンズの中で最も高い撮影倍率となっています。
つまり、小さなものでも画面いっぱいに写せるので、迫力のある写真が撮れるってことですね。
こちらの写真は桜の花を近距離で撮影したものになります。
普通でしたら桜の花といえば、満開時に鮮やかなピンク色が広がる景色や、人物撮影の背景などで撮影されがちですね。
しかし、このレンズでぐぐっと近寄って撮影すれば、花の1つ1つがもつ繊細で普段は気にもとめないような部分を克明に切り取ってくれます。
手持ちでも快適にマクロ撮影
このレンズには素早いAFと強力な手ぶれ補正機構がついています。
そのため、このような写真を撮影する場合でもしっかりと中央の桜の花のおしべにピントを合わせてくれます。
外で手持ちで撮影するとなると体をほんの少し前後に動かしながら連写するなど、工夫が必要になります。
以前私は他のレンズを使用して手持ちでマクロ撮影していたのですが、ピントが合う写真が撮れるまで連写をすると、当然のようにミスショットを連発していました。
ミスショットが増えるとSDカードの容量が圧迫されたり、写真データを整理する際に無駄に枚数が増え、正直面倒でした。
しかし、この「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」であれば、近距離でもAFが使えます。
マニュアルでピントを合わせたり、体を動かすなどの手間も少なくなり、撮影時間の短縮でき、おかげで以前よりも撮影時のストレスはだいぶ改善することができました。
レンズ本体にはこのようなピントの合う距離を切り替えられるスイッチがついています。
私はこのスイッチをよく使用する方で、桜の花など被写体と背景の距離が遠い場面で使用するとAFでピントがいきなり背景まで持っていかれ、至近距離まで戻す時間が短くなるので便利でした。
また、手ぶれ補正も強力なので、三脚などを使わずともしっかり撮影することが可能で、撮影時の荷物を少なくすることもできます。
手ぶれ補正の方も切り替えのスイッチがレンズ本体についています。
私の場合はずっと手ぶれ補正をONにしていますが、いらない場合はレンズ本体で切り替えられるので便利ですね。
FUJIFILM純正レンズの中でも最高クラスの描写力
このレンズの魅力といえば、純正レンズの中でも屈指の解像感を持つことです。
上記の作例のように散ったばかりの花びらのきめ細かさ、コスモスの雄しべをくっきりと写し、透き通るような花びらのグラデーションをしっかりと捉えています。
ボケもとろけるように広がって、綺麗ですね。
この写真は真夏のひざしが強い日に逆光でマリーゴールドを撮影したものですが、フレアやゴーストがほとんど出ていません。
逆光耐性が強いと、花びらが透けるファンタジーな写真が撮れやすいので、そういった表現の撮影がより一層楽しくなります。
(FUJIFILM X-S10 80mm F2.8 1/500 ISO160 XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro)
またFUJIFILMではお馴染みのフィルター「フィルムシュミレーション」と組み合わさると、他社のカメラとは違った表現ができ、独特な写真が撮れます。
上記の桜の写真は逆光に加え、フィルムシュミレーションの「クラシックネガ」で撮影したものです。
日光のような強い光が当たっても、くっきりと花びらの脈まで解像して、どこかノスタルジーな雰囲気の写真になりました。
防塵防滴機構
さらにこのレンズには防塵防滴機構がついています。
この写真は小雨が降る日に花びらの散った梅の花を撮影したもので、撮影時には小雨によってレンズに沢山の水滴が付着してしまいましたが、その後も問題なく使用できています。
もちろんレインカバーなどをつけて撮影すれば良いのですが、突然の雨の中で生まれるシャッターチャンスを逃さず撮れる安心感があります。
ただ私の使用している「FUJIFILM X-S10」のボディは防塵防滴機構がついてないので、同じ組み合わせで使用したらボディだけ動かなくなるかもしれませんので注意してください。
他のマクロレンズとの比較
このレンズの購入以前は「XF 60mmF2.4 R Macro」を使用していました。
マクロ撮影にてFUJIFILMの純正レンズで比較するのなら、「XF 60mmF2.4 R Macro」と「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」の2本を比較検討する方は多いでしょう。
ここからは実際に2本のレンズを使用してきた実体験を交えながら、それぞれの良い点、悪かった点を比較していきます。
まずは「XF 60mmF2.4 R Macro」のスペックを見てみましょう。
レンズ構成 | 8群10枚 |
焦点距離 | f=60mm(35mm換算 f=91mm) |
開放F値 | F2.4 |
最短撮影距離 | 27cm |
最大撮影倍率 | 0.5倍 |
外形寸法 | 64.1mm×63.9mm |
質量 | 215g |
フィルターサイズ | 39mm |
その他 | なし |
価格 | 63,654円~ |
私が最初にこちらの「XF 60mmF2.4 R Macro」を「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」よりも先に購入したのは、比較的価格が安くて小さかったためです。
また、こちらの「XF 60mmF2.4 R Macro」は参考になるレビューや動画サイトのレビューも多く、使用するイメージを持ちやすかったのも決め手になりました。
それから「XF 60mmF2.4 R Macro」を半年以上撮影で使用し続け、解像感やコンパクトさに満足していたものの、撮影倍率やAFが遅いという点が気になりだし、「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」を検討し始めました。
それから「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」を購入し、どっぷりその魅力にハマった私ですが、たまに「XF 60mmF2.4 R Macro」を持ち出して撮影したりします。
そもそもの話ですが、この2本のレンズは焦点距離が違います。
当然撮影する際は画角が変わるので、撮れる写真も変わってきますね。
マクロ撮影をする際はこの2本のレンズの画角の違いはそこまで気になりませんが、スナップ撮影するとなると「XF 60mmF2.4 R Macro」の方が私は使いやすいと思います。
「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」はスナップや風景の撮影をするには難しく、私がこのレンズに汎用性がないと感じている点はここにあります。
もちろんマクロ撮影するなら断然「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」ですね。
素早いAFや強力な手ぶれ補正や防塵防滴機構には何度も助けられていますし、撮影時の快適さが全然違います。
しかし「マクロ撮影もしてみたいけど、スナップとかも撮影したい!!」という人にはコンパクトで他のレンズと一緒に持ち運びやすい「XF 60mmF2.4 R Macro」の方がおすすめかもしれません。
なので、とりあえずFUJIFILMでマクロ撮影もしたいけど、取り回しの良いレンズがいいって人は「XF 60mmF2.4 R Macro」のレンズがいいかもしれません。
逆に「マクロ撮影を快適にしたい!!」とマクロ撮影をどっぷりしたい方だったら迷わず「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」をおすすめします。
半年間使用してきて、このレンズはマクロ撮影における快適さや撮れる写真に関してはFUJIFILM最高峰だと思います。
FUJIFILMのフィルムシュミレーションと合わせて、このレンズでしか撮れない写真は間違いなくあるので、少しでも興味がある方はぜひ手に取ってみてほしいです。
FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macroのメリットとデメリット
あらためて、このレンズのメリットとデメリットをまとめてみます。
- 圧倒的な描写性能
- 至近距離でも使用できる素早いAF
- 防塵防滴機構で天気を気にせず使いやすい
メリットは散々お伝えしてきましたが、やはり圧倒的描写力は魅力的ですね。
逆光耐性も強いので、フレアやゴーストも出にくく、写真表現の妨げとなる要素がありません。
雨の日や埃っぽい場所でも、レンズの心配をしなくていいのは撮影に集中できるのもあり、安心感があります。
- 他のレンズと比べて重い
- 画角が使いにくい
- 価格が高め
デメリットも散々お伝えしてきましたが、実際サイズが大きく、使いにくい画角はネックでした。
ちょっとした旅行に行く時などは特にこのデメリットのために持っていくことを躊躇ってしまいがちになります。
旅行などに持っていくには汎用性の高いズームレンズと小さくて持ち運びやすい単焦点の組み合わせの方が何かと融通が効くので、下手するとこのレンズは1本で他のレンズ2本分のスペースを占領してしまうので何度も悩ましい思いをしました。
またFUJIFILM純正の単焦点レンズの中では価格が高い方なので、購入するにも勇気が入りますね。
それでも、マクロ撮影に興味があるならば持っていて後悔のない1本だと思います。
まとめ
「FUJIFILM フジノンXF80mm F2.8 R LM OIS WR Macro」の長期使用レビューをさせていただきました。
正直汎用性や使いやすさの観点から言えば、あまり万人におすすめできるレンズではありません。
スナップや風景撮影で使うには画角が使いにくく、旅行などで持っていくには大きさや重さがネックでした。
しかし、そんなデメリットが気にならないほどの感動をもらったレンズでもありました。
綺麗なボケ、ピント面の繊細で克明な描写力、マクロ撮影時の快適さ。
正直こんなに使い勝手が良いとは言えないレンズなのに、購入してから私が後悔することがなかったのは、このレンズでしか撮れない写真があったからだと思います。
万人にはおすすめできませんが、花やアクセサリー、マクロ撮影を楽しみたい方はぜひ使ってみてほしい1本です。
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